かぶと虫やクワガタムシを飼育している方のブログなどで時々出てくる「羽化不全」。
羽化という言葉を使っていますので、蛹から成虫への変態時に何かが起きるということは予想できるのですが、正確には何が起きているのでしょうか?
この記事では羽化不全とその原因、飼育している場合の対策について解説します。
羽が完成するまで
蛹から成虫になる昆虫(完全変態昆虫)の中で、羽を持つ昆虫は、羽化直後は羽が完成されていません。
チョウやガの蛹の形を見るとわかりますが、羽を伸ばすようなスペースは蛹の中にはありません。
そのため、蛹から成虫が出る時には、羽はクシャクシャな感じで出てきます。その後、羽に体液を送り込んで伸展させます。羽には体液を通すパイプのようなものがあり(翅脈)、ここに体液が流れ込むと、ピンと張った羽になります。水圧を利用すると表現するとわかりやすいかもしれません。
人間のように、心臓というポンプがあれば、一気に体液を送り込めますが、昆虫のように血管を持たない生物の場合は体液を送り込むのにやや時間がかかります。
そして伸びた羽が乾くと飛翔が可能となります。
羽化不全とは
この過程で、何らかの不具合が生じると、羽が完全に伸展しません。これを羽化不全と言います。昆虫にとっては、飛翔が不可能となるケースが多いトラブルですので、かなり深刻です。
羽化不全の原因はいくつかあります。まずは、羽に体液が十分に送り込まれなかった場合です。
体液を通す羽の中のパイプが何らかの原因で詰まっており、パイプ全体に体液が行き渡らないと、飛翔を可能とするまでの伸展ができません。
次に、羽を伸展させるスペースが確保できなかった場合です。これは地中で羽化する昆虫に多い原因です。体液を送り込まれた羽は伸展しようとしますが、スペースがないために伸展しきれず、飛翔に必要な羽の面積を確保できなくなります。
そして、羽の進展中に何らかの原因で羽が破れたりした場合です。羽化したばかりの昆虫の羽は、完全な成虫と比べると柔らかいので、どこかに触れたり、他の生物が触れたりしただけでも大きな影響を受けます。
他にも原因はあると考えられていますが、代表的な原因はここに挙げた3つと考えられています。
カブトムシやクワガタの場合
カブトムシやクワガタムシを飼育して、繁殖させている方のブログなどでは時折見かける羽化不全ですが、人工的な飼育の場合は対処さえすれば大きな問題にはなりません。
ケースとしては、硬い羽の下にある薄い羽が羽化不全になるケースが多いようです。きちんと折りたたまれることができずに、硬い羽の下から薄い羽がはみ出てしまいます。
この場合は、薄い羽のはみ出た部分をハサミで切れば問題ないようです。人工繁殖の場合は、飛翔して繁殖相手を探す必要がないので、必ずしも羽は必要ないからです。
羽化したての昆虫には触らない方が良い
セミ、トンボの羽化する場を見つけることがありますが、羽が完全に伸展し、体の色が落ち着くまでは触らないであげて下さい。
人間にしてみればちょっと触ったつもりでも、羽化したての昆虫にとっては大きな影響になります。
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