ムカデと形が似ているため、よく混同されるヤスデは、その姿形の異様さ、臭気によって不快昆虫とされています。また、大発生することがあることでも知られています。
捕まえて体を調べればムカデとの違いはすぐにわかるのですが、触りたい人なんてよほどの人以外はいませんよね。
ムカデは鳥や哺乳類などの天敵がいますが、ヤスデにも天敵はいるのでしょうか。天敵がいれば大発生の時に非常に役に立つのですが・・・・・・
ヤスデとムカデの違い
まずはヤスデとムカデの違いを説明します。形では、ヤスデの方が短足の傾向があります。他にも、生殖口の場所が異なっていたり、体節あたりの脚の数が違っていたりします。
ヤスデはムカデと違って攻撃性が低く、人を咬んだりすることはありません。
ムカデは他の動物を捕食するのに対して、ヤスデは捕まえて食べるという行動はしません。土の中にある有機物質などをエサにしています。森林では、ヤスデは分解者の役割を担っており、落ち葉を食べて栄養が豊富な糞をするので、草木の成長に貢献しています。
小海線での事件
ヤスデは時々大発生することがあります。1970年代には、長野県と山梨県を走る小海線の線路周辺でヤスデが大発生しました。
大量のヤスデが線路上で列車に轢かれ、線路がヤスデの体液でべっとりとなりました。そして大発生した区間が急勾配の区間だったために、列車の車輪がヤスデの体液ですべり、数本の列車が立ち往生、10本以上が運休となりました。
気温が下がってヤスデがいなくなるまで、国鉄(現在のJR)は、ヤスデの駆除、列車運休による代替輸送に追われました。
人に攻撃はしませんが、意外なところで社会に迷惑をかけています。
とにかく臭い
攻撃性の低いヤスデは、優れた防御システムを持っています。人を咬んで毒を送り込むようなことはしませんが、体表の毒腺から、刺激性のある臭気を持つ液体や気体を分泌します。
踏み潰したりすると体液が流れ出しますが、この臭気は凄まじいものがあります。大発生した場合は、独特の臭気が周辺にばらまかれます。
臭いで防御
この臭気のせいか、ヤスデにはこれといった天敵がいません。
捕食しようとするとくるっと丸まって、強烈な臭いの気体や液体を分泌するので、とても食べようという気にはならないでしょう。
密閉容器にヤスデを閉じ込めると、自分の分泌する液体の臭いで自分が死ぬ、と言われるくらいの臭気です。
この液体は人間にとっても毒である成分を含んでいますので、皮膚についたりすると影響が出ますし、体内に入ると重篤な症状を起こす可能性があります。昔は、ヤスデの体液は狩猟用の毒として用いられていたという記録があります。
ある意味、無敵に近い生物かもしれません。
森林維持には重要な生物
見た目やその臭気で嫌われてしまうヤスデですが、多くのヤスデは我々が目にするところに出てきません。
ヤスデたちは主に、山林、森林の土の下で、ひたすら落ち葉を食べ、草や木の成長のための栄養となる糞をしています。
分解者としての働きは、森林の維持に非常に重要です。
また、昆虫などが含まれる節足動物門の中では、進化の中でもっとも早く陸上に進出した生物と言われています。
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