本の害虫で、シミ(漢字で書くと紙魚)という虫を御存じの方は多いと思います。
図書館など、本を大量に所蔵している場所ではこの虫の対策は非常に重要です。しかし、ちょっと誤解されているところもあります。
本などに穴を開けるのは、シバンムシなどの他の虫です。シミは、紙の表面をなめるように食べるので、穴を開ける事はありません。
とはいえ、本にとっては危険な害虫です。この記事では、シミとはどんな虫かを解説します。
原始的な昆虫
シミは昆虫の一種ですが、現在生息している昆虫の中では珍しい生態・形をしています。
これは、シミが原始的な昆虫であり、昔の生態・形を受け継いでいるからです。
一見エビのような形をしているシミには、羽がありません。そして、幼虫から蛹、成虫になるという生活環もありません。
生まれたときから成虫とほぼ同じ形をしているというのは、同じく原始的な昆虫と言われるゴキブリと似ています。
シミにはどんな種類があるの?
代表的なシミは、セイヨウシミ、ヤマトシミ、マダラシミ、セスジシミの4種です。
日本に昔から住み着いているのはヤマトシミですが、最近はヨーロッパからの荷物などにもぐり込んで日本に上陸したセイヨウシミ、セスジシミの勢力が強いようです。
マダラシミは日本では人工飼育されているもの以外はほとんど見られません。
シミの害は本だけ?
本への害が有名なシミですが、害を及ぼすのは本だけではありません。
シミは、多糖類、デンプンを含むものを食物としています。これらが含まれている紙は全てがシミのエサとなります。
ですので障子、ふすまの紙などもシミの害を受けます。
セイヨウシミはこれらの紙製品だけでなく、綿、麻、絹などの繊維、さらには人工繊維も食物にします。
紙製品、繊維製品は全てシミのターゲットになるリスクがあると考えて間違いはありません。
紙の場合は表面をなめるように食べ、穴を開けたりする事はありません。そのため害は目立ちにくいのですが、長い期間を経ると、はっきりと食されている事がわかるようになります。
シミが苦手なものは?
シミは一般的に夜行性です。暗いところを好み、明るいところを嫌います。
蛾などは光に集まる習性があります。これを正の走光性と言いますが、シミの場合は光を避ける習性、つまり負の走光性があります。
直射日光に非常に弱く、死んでしまう事もあります。また、湿気にも敏感で、乾燥しすぎると水分不足で死にますし、湿度が高すぎると病気が発生しやすくなります。
「虫干し」といって、衣類や本を風通しのよいところで陰干しするのは、虫やカビを防ぐためです。
陰干しとはいえ日中は光があります。直射日光の方がシミには効果があるのですが、本や繊維にも直射日光はよくないので、人間は経験的に陰干しを選んだのではないでしょうか。
また、風通しが良いので湿度も低くなる傾向にあります。湿度が低くなると、空気中から水分をとっているシミは、水分が不足して弱るか死んでしまいます。
これからも人間と生きていくシミ
害はある程度は防げますが、シミを完全に駆除するのはかなりの難易度です。
家屋のあちこちに潜み、長い間人間と共に生きてきました。
ゴキブリとは異なり、体長は1センチに満たないものが多く、目につく事が多くないので生き延びてきたという側面もあるかもしれません。
実際、シミを感じで書いた紙魚は、俳句の夏の季語になっています。また、鱗粉が雲母のように光る事から、雲母虫(きららむし)と呼ばれる事もあります。
この先、人間が紙と繊維を使っている間は、共に生きていく生き物と言えます。
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