賛否両論、アリの巣にアルミを流し込む実験について

 

アリは一般的に見かける昆虫で、特に珍しくもありません。アリの巣も公園などで時々見かけます。

 

しかし、我々が見ることができるアリの巣は、出入り口だけで、巣の中がどうなっているのかを見ることはできません。

 

最近、こんなサイトがあります、Anthill Artというサイトです。

 

このサイトにある「Ant Colony Casts」とあるものは、全てアリの巣を元に作られたオブジェです。これはどうやって作るのでしょうか?

 

複雑で巨大なアリの巣

アリの巣を簡単に描くと下のイラストのようになります。

 

いくつもの小さな部屋が通路でつながれています。小部屋には、幼虫、蛹を育てる部屋、食糧を貯蔵する部屋、繁殖をする部屋などがあります。

 

イラストでは簡単に描きましたが、実際は小部屋の数はかなり多く、地面からの深さももっと深く、かなり複雑です。

 

アリの巣に溶かしたアルミニウムを流し込む

アリの巣の構造は、昔から昆虫学者にとって興味の対象でした。

 

水槽などでアリを飼育して巣を作らせ、横から見るなどの方法はありましたが、天然のアリの巣が見たいという欲求はある方法を生み出しました。

 

それは、アリの巣に石膏やコンクリートを流し込み、固まったところで取り出すという方法です。

 

固まった石膏やコンクリートは、巣の形そのままに固まるので、巣の空間の形がこの方法でわかります。

 

しかしこの方法では掘り出す時に壊れてしまったりするために、修復が必要でした。

 

そこで昆虫学者であり、フロリダ州立大学教授であったWalter R. Tschinkel氏は、溶かしたアルミニウムをアリの巣に流し込む、という方法を思いつきました。

 

溶かしたアルミニウムをアリの巣に流し込み、冷えて固まったところで掘り出します。それが冒頭で紹介したサイトにあるオブジェです。

 

中にいるアリはどうなるの?

アルミニウムが溶ける温度は660℃。ですので流し込んだアルミニウムは660℃以上の温度です。

 

この温度ですとアリは当然死にますが、死体は残りません。このくらいの温度ですと、アリは一瞬にして気化してしまいます。

 

一説によれば、誘引剤を使って巣の中にいるアリを全て外に誘き出し、空き家となったアリの巣にアルミニウムを流し込んでいるとのことです。

 

この方法で全てのアリを外に誘き出すことが可能かどうかはわかりませんし、先に挙げたサイトのようにこの方法を使う人が増えているので、おそらくは巣の外に誘き出さずにそのままアルミニウムを流し込んでいる人もいると思います。

 

人間は相手が昆虫ですと、哺乳類などを比べて抵抗感が薄れるせいか、かなり無茶なこともする傾向にあるようです。

 

スズメバチのように人に危害を与える昆虫の巣を破壊する動画はYouTubeにいくつも上がっていますが、これは巣を放って置くと、攻撃性の高いスズメバチに周辺の人間が攻撃されるリスクが高いため、多少致し方ないところもあります。

 

興味深いし面白いのですが・・・・・・

この件については賛否両論あります。できあがったアルミニウムのオブジェは確かに見事ですし、興味をそそられます。

 

しかし、誘引剤を使ったとしても全てのアリを巣から排除するのは難しいこと(巣のかなり深いところにいるアリに誘引剤の効果が届くかどうかなど)から、批判的な意見があることも事実です。

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