現代では、蜘蛛は見た目から気味が悪いことから苦手な方が多いと思います。ですが、昔は室内に虫が入ってくるのは当たり前でした。
季節を感じたり、何かの縁起を担いだり、古典と呼ばれる文学に虫についての文章は多く、それらをもとにして虫はスピリチュアルな意味で解釈されることもあります。
日本だけでなく、外国でも蜘蛛はそういう意味に使われます。ドリームキャッチャーというお守りは、蜘蛛の巣をベースにしたお守りです。悪い夢は蜘蛛の巣に捕まり、良い夢は蜘蛛の巣をすり抜けて我々のもとに届く、というものです。
この記事では、蜘蛛、特に朝の蜘蛛の意味について解説します。
朝の蜘蛛は吉兆
「日本書紀」にある姫と蜘蛛の話があります。その姫のもとには、時の天皇が訪れていました。ある日の朝、その姫は蜘蛛が巣をかけたのを見て、「わが背子が来べき宵なりささがねの蜘蛛の行い今宵著しも」と、その夜に天皇が訪れることを予感したとあります。
このことから、朝の蜘蛛は、待ち人が来る、または待っている知らせがやってくる事を示す吉兆として解釈されるようになりました。
蜘蛛は神仏の使いとして解釈されていた部分も日本にはあります。
芥川龍之介の書いた「蜘蛛の糸」では、蜘蛛が釈迦の命によって罪人であるカンダタに向かって糸を垂らします。
これに似た話は、スウェーデンにもあり、そこではイエスが地獄に送り込むのは天使です。
つまり、天使にあたるものが、日本では蜘蛛とその垂らした糸ということになります。
蜘蛛が巣をかけるとその日は晴れ
農業を基盤として成立していた昔の日本では、天候は重要な事柄でした。
その天候を予測するために、蜘蛛の巣も使われていました。
・朝、蜘蛛が巣を作るとその日は晴れ
・朝、蜘蛛の巣に露がついているとその日は晴れ
このように、農作業を始める前、朝の蜘蛛の行動によってその日を占った言い伝えが残っています。
朝の蜘蛛は、神仏の使い、吉報を運ぶもの、その日の晴天を保証してくれるもの、として、縁起が良いものとして扱われていました。
夜の蜘蛛は?
逆に、夜の蜘蛛はどうなのでしょうか?
夜の蜘蛛、夜蜘蛛(よくも)、と読んで、「よくも来たな」のような言い方をして、凶兆ととらえる言い伝えが日本には多いようです。
しかしフランス、ドイツでは、朝の蜘蛛は悲哀、昼の蜘蛛は心配、夜の蜘蛛は希望、としている地域もあるようです。
日本でも、多くは凶兆とされていますが、地域によっては人間の味方をしてくれるものとしている地域もあるようです。
南北朝時代、敵の大軍が攻めてくるかもしれない状態だった武将の館の軒下に、大きな蜘蛛が夜になって巣をかけました。それを見た武将は、もしかしたら神仏のお告げかもしれない、と考えました。
蜘蛛の巣、ということから、自分の領地に入ってくる道に、蜘蛛の巣を習って罠を仕掛け、そばに兵を隠しておきました。
夜遅くなって、その罠に敵の軍が引っかかり、その武将は僅かな兵で敵を追い払うことに成功した、という言い伝えがある地域にあります。
その地域では、夜の蜘蛛は自分の危機を知らせてくれるもの、として大事にしています。
蜘蛛は害虫を捕まえてくれる
蜘蛛の姿が気持ち悪い、というのは近代になっての価値観かもしれません。
昔の人間にとっては、農業害虫などを蜘蛛の巣で捕まえてくれる人間の味方として考えていたのではないでしょうか。
あまり殺虫剤をかけるようなことをして、人に害を与えないような虫まで殺さないほうがいいのかもしれませんね。
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